【キャリア相談事例】事務職30年からの再出発。未経験チャレンジか?経験重視か?

「今の会社を辞めなくてはならなくなった。でも、私には何ができるんだろう?」
「事務職しか経験がない私なんて、他の会社で通用するの?」
「せっかくのリスタート、今までと違う仕事をしてみたい気もするけれど……」
今回は、そんな深い悩みを抱えて相談に来られた方のキャリアカウンセリング事例をご紹介します。
もしあなたが今、これからの働き方に迷っているなら、この記事の中にヒントが見つかるかもしれません。
【※守秘義務およびプライバシー保護のため、個人が特定されないよう、設定を一部変更しています】
1. 相談者のプロフィール:30年間「なんとなく」こなしてきた事務職
今回のご相談者、Aさん(48歳・女性)は、ご両親と3人暮らし。
高校卒業後、地元の小さな商社に就職し、以来30年間、正社員として事務職一筋で働いてこられました。
真面目に勤務されていましたが、会社の経営不振により、事業縮小に伴う会社都合での退職を余儀なくされました。
【Aさんの悩み】
- 経験への不安:
小さな会社で、マニュアルもない中「なんとなく」やってきた事務作業。
一般的な企業の事務職として通用するスキルがあるのか自信がない。 - 方向性の迷走:
「一生事務職で終わりたくない」という気持ちが芽生えているが、具体的に何をしたいのかわからない。 - 年齢の壁:
48歳という年齢で、未経験の職種にチャレンジするのは無謀ではないかという恐怖。
Aさんはカウンセリングルームに入ってきた当初、伏し目がちで、自信なさげにこう仰いました。
「私には、これといった強みも資格もありません。ただ言われたことをやってきただけなんです」
2. 「未経験への憧れ」と「現実」の狭間で動けなくなる
当初、私は、現実的なアドバイスを試みました。
48歳という年齢、そして30年という長い事務経験を考えれば、やはり「経験を活かした事務職」が最も採用確率は高いと言えます。
「Aさん、未経験の仕事に就くのは、正直に申し上げて若い世代でも簡単ではありません。まずは、長年の事務経験を武器に探してみてはいかがでしょうか?」
しかし、Aさんの表情は晴れません。
求人サイトで事務職の募集を見ても、「パソコンスキル上級求む」「経理実務3年以上」といった言葉に圧倒され、「私には無理です」と尻込みしてしまいます。
一方で、
「じゃあ、どんな仕事なら興味がありますか?」
と聞くと、
「……わかりません。何か、人と接する仕事が良いような気もするし、もっとクリエイティブなことがしたい気もするし……」
と、答えは曖昧なままでした。
そこで、まずは応募書類(職務経歴書)を作成してみようとなりましたが、ここでAさんの手は完全に止まってしまいました。
「志望動機が書けません。自己PRと言われても、書くことが何もないんです」
3. 「自己分析」ができない!キャリアの棚卸しで陥る罠
転職活動において、「自己分析」や「キャリアの棚卸し」は必須と言われます。
私もAさんに、
「これまでの仕事で工夫したことや、実績を書き出してみましょう(棚卸し)」
と提案しました。
しかし、これが逆効果でした。
Aさんは、
「実績なんてありません」「売上を上げたわけでもないし、ただの事務員ですから」
と、自分を過小評価する言葉ばかりが出てきて、余計に行動できなくなってしまったのです。
真面目な方ほど、「自己分析=立派な成果を探さなければならない」と思い込んでしまいます。
Aさんの場合、
「30年も働いたのに、私には語れるものが何もない」という無力感に襲われてしまっていました。
ここで私は、アプローチを変えることにしました。
机上の空論のような「分析」をやめ、Aさんの「30年間の思い出話」を聞くことにしたのです。
4. 「小さな会社の何でも屋」は、実は最強の「総務のプロ」だった
「Aさん、仕事のことは忘れて、会社で『一番大変だった日』のこと、覚えてますか?」
そう尋ねると、Aさんはポツリポツリと話し始めました。
「うーん、そうですね。数年前、事務所が移転した時は大変でした。社長は何もしないから、私が引越し業者を手配して、電話回線の工事も全部調整して、社員の机の配置も考えて……。あ、あの時は、新入社員の子が悩み相談に来て、仕事の合間にずっと話を聞いたりもしていましたね」
私はその話を聞き逃しませんでした。
「Aさん、それは単なる『事務』ではありませんよ。『オフィス環境の構築』であり、『業者折衝』であり、『メンター(新人教育)の役割も果たしています。
大企業なら、総務部や人事部が分担して行うことを、Aさんは一人で回していたんですね」
Aさんは驚いた顔をしました。
「えっ、そんなの大したことじゃないです。誰かがやらなきゃいけなかったから、やっただけで……」
「それが強みなんです。『誰かがやらなきゃいけないことを、言われる前に気づいて、自分から動いて完遂できる力』。
これは、指示待ちの事務員にはできない、Aさんだけの立派なスキルですよ」
小さな会社で30年働いたということは、経理も、総務も、人事的なケアも、営業のサポートも、すべてを「自分事」として捉えてきた証拠です。
Aさんのスキル名は「事務」ではなく、「組織を円滑に回す運営力(マネジメントサポート)」だったのです。
5. 50代目前のキャリア戦略:「職種」を変えず「場所」を変える
自分のやってきたことの価値に気づいたAさん。 しかし、ここで「じゃあ、未経験の営業職に!」とはなりませんでした。
話を深める中で、Aさんが「別のことをしてみたい」と言っていた本当の理由は、「ただパソコンに向かうだけの毎日に飽きていた」「もっと人から感謝される実感が欲しかった」ということだと分かりました。
そこで、私たちは一つの戦略を立てました。
【Aさんの新・キャリア戦略】
- 職種(やること): 得意な「事務・サポート業務」を軸にする。(無理な未経験職種への転向はリスクが高いため避ける)
- 業界(いる場所): これまでの「商社」ではなく、人との関わりが密接な「教育業界」や「医療・福祉業界」、あるいは「NPO法人」などのバックオフィスを狙う。
これなら、30年の事務スキル(即戦力性)を活かしつつ、Aさんが求めていた「人への貢献」「新しい環境」という欲求も満たせます。
この方針が決まると、Aさんの志望動機は劇的に変わりました。
修正前: 「貴社の事務職として、正確に業務を行います。」
↓
修正後: 「30年間、小規模な組織で総務・経理から社員のサポートまで幅広く担当してきました。これからは、その『気づく力』と『サポート力』を活かし、社会貢献性の高い貴法人で、現場で働く方々が業務に集中できる環境づくりに貢献したいと考え、志望いたしました。」
これこそ、48歳のベテランにしか書けない、深みのある志望動機です。
6. まとめ:40代・50代の転職は「強みの再定義」がカギ
その後、Aさんは地元の「社会福祉法人」の事務局に応募し、見事採用が決まりました。
面接では、「30年間一つの場所で勤め上げた忍耐力」と、「マニュアルがなくても自分で考えて動ける柔軟性」が高く評価されたそうです。
Aさんは今、新しい職場で、介護スタッフさんたちの勤怠管理や備品発注を行いながら、「Aさんがいてくれて助かるわ」と言われる毎日に充実感を感じているそうです。
【今回の事例からの学び】
- 「やりたいことがわからない」は「自分の価値」を知らないだけかも:
自分を過小評価していると、選択肢が見えなくなります。まずは「当たり前にやってきたこと」をすごいことだと認めてあげましょう。 - 自己分析は「立派な実績」を探さなくていい:
「誰かの手伝いをした」「トラブルを止めた」といったエピソードの中にこそ、あなただけの強み(ポータブルスキル)が隠れています。 - 「未経験」へのチャレンジは「業界」で叶える:
40代以降は、職種をガラリと変えるのはハードルが高いですが、「得意な職種」を持ったまま「働く業界」を変えることで、新鮮なやりがいを得ることができます。
もし、あなたもAさんのように「今のままでは嫌だけど、どうしていいかわからない」と悩んでいるなら、一人で抱え込まずに相談してください。
あなたの30年、20年の経験の中に、次のステージへの「宝の地図」は必ず眠っています。
キャリアの棚卸し、一緒にやってみませんか?
「自分の強みが言葉にできない」「応募書類が書けない」 そんな時は、ぜひ一度キャリアカウンセリングをご利用ください。
あなたの話す「何気ないエピソード」から、私があなたの強みを発掘し、採用担当者の目に留まる言葉に変換するお手伝いをします。
まずは、お気軽にお問い合わせください。あなたの新しい一歩を、全力でサポートします。

